chikuchikutick

毎日おもったこと、見つけたことをちくちく発信していきます

「コンビニ人間」の感想〜多様性の中にある均一な社会のいびつさ〜

f:id:haruism:20190414020712p:plain

もうすぐ平成が終わりますね。

2019/03/07に朝日新聞が「平成の30冊」を発表していました。

平成時代に刊行された本の中から、識者120人が選んだベスト30冊

book.asahi.com

平成に刊行されたとはいえ、結構昔の作品もあり、

知らない本もたくさんありました。

ざっと見た中で、気になった「コンビニ人間」を読んでみたので、

あらすじと感想を紹介します。

コンビニ人間」とは?

この本は村田沙耶香さんによって書かれており、2016年に第155回芥川賞を受賞しています。

また30ヵ国以上の言語に翻訳されて、

ザ・ニューヨーカー」でも「The Best Books of 2018」に選出されていました。

gqjapan.jp

「日本のコンビニを知らない海外読者にどうやって見えるんだろう」と

気になるところではありますね。

コンビニ人間」のあらすじ

f:id:haruism:20190414020701p:plain

「普通」とは何か?
現代の実存を軽やかに問う第155芥川賞受賞作

36歳未婚、彼氏なし。コンビニのバイト歴18年目の古倉恵子。
日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、
「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる――

「いらっしゃいませー!!
お客様がたてる音に負けじと、今日も声を張り上げる。

ある日、婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて、
そんなコンビニ的生き方は恥ずかしい、と突きつけられるが……

 

引用:文春文庫『コンビニ人間』村田沙耶香 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS

 

 幼い頃から親・兄弟・周りの人たちに

「普通じゃない」「治さないといけない」と言われながら育った主人公は

主体的に何かをすることをしないようになっていく。

そんな中、大学1年生で始めたコンビニバイト。

このコンビニバイトが主人公・恵子を「社会」と結びつけてくれた。

マニュアル通りに動くことで、異質だった恵子は「社会」に溶け込むことができるようになった。

周りから、「異質」であることがばれないように、過ごしてきた恵子だが、

婚活を目的にコンビニに入ってきた白羽という男が現れる。

なんでコンビニバイトを18年も続けているのか?

なんで就職しないのか?

なんで結婚しないのか?

この言葉ばかりを投げかけてきた周りの人たちが、白羽の存在によってどう変わるのか……

恵子はどのようになっていくのか……

コンビニ人間」の感想

f:id:haruism:20190414020705p:plain

読んだ感想を書いていきます!

読後感

160ページと短めのお話なので、移動時間にさっくり読めました。

読書の習慣がなくても

すらすらと読める文章の爽やかなのに、内容は結構ずっしりくる

というギャップがよかったです。

主人公が見えている世界って自分が知らないだけで、

きっと同じような人はいるかもしれないと思うと、心がキュッとなりました。

主人公の恵子は何も悪くないはず。

(誰にも迷惑をかけず、きちんと仕事をして、自分の力で生計を立てている)

なのに、この生きづらさは

誰のせいなんだろう、常識ってなんだろう、社会ってなんだろう

と考えさせられました。

「普通」って何よ?

読んでいる間、この言葉がずっとぐるぐるとしていました。

就職、恋愛、結婚、出産

たしかに、多くの人がこれらを経験するけれども、

義務でもないし、誰かに強制されたことはない。

強制しているのは、社会なのかもしれないと思いました。

それは、自分の欲望のためだったり、

親のためだったり動機はきっといろいろあるはず。

ただ、やっぱり周りと違いすぎる主人公・恵子は、

これらを経験することを望んでないし、

頑張ってもできないあたりが、読んでいて、かなりしんどいし、

こういう人が少しでも生きやすい社会がこれからは求められるのかもしれないです。

恵子みたいな気持ちってみんなどこかに持っている

恵子は少し極端かもしれないですが、

誰もがどこかしらに、こういう「生きづらさ」を抱えているのかなって思いました。

だからこそ、この作品が、多くの人に受け入れられたのかもしれないです。

まさに「平成の30冊」の1冊

平成は特に「個人の多様性」を受け入れようとした社会だと思います。

かくいう私は、平成しか知らないですが……

ゆとり教育や総合教育など、尖ったものを受け入れようとしてきた時代。

そんな「平成」を象徴する1冊ですね。